その他の遺言知識
遺言できる内容
遺言にはどのようなことを書いてもかまいませんが、遺言に記載した全てのことが法的効力があるというものではないことを覚えておきましょう。
民法では、遺言することができるものとして以下の10項目を限定列挙していますので、これら以外の内容ついては、仮に遺言書に書いたとしても法律上の効力はありません。
相続人が道義的に遺言者の意思を尊重するのはもちろん自由ですが、強制することはできません。
生前に相続人に言いたかったが言えなかったこと、依頼事やお願い、家訓、その他自分の希望等、死後気になることを書き記すのはよいことです。
ただし、上記の通り強制できませんし、下記項目以外は民法上の効力を持ちません。
民法で定める遺言できる内容(法律上効力を生ずる10項目)
- 認知(民法781条2項)
- 財産の処分すなわち遺贈と寄付行為(民法964条、41条2項)
- 後見人、後見監督人の指定(民法839条、848条)
- 相続の廃除およびその取消(民法893条、894条2項)
- 相続分の指定または指定の委託(民法902条)
- 遺産分割方法の指定または指定の委託(民法908条)
- 遺産分割の禁止(民法908条)
- 相続人相互の担保責任の指定(民法914条)
- 遺言執行者の指定または指定の委託(民法1006条)
- 遺贈減殺方法の指定(民法1034条)
遺言することができない人
満15歳未満の者
未成年でも、親が子の代理として法律行為を行えますが、遺言だけはできません。
その人の最終的な意思を実現させるという性質上、こればかりはたとえ両親でも代理は許されておりません。
遺言する能力のない者
遺言する能力のない者が為した遺言は無効です。
精神病、過度のノイローゼ、認知症等、正常な判断能力がない者は遺言できません。
また、酪酊状態等の時に行った遺言も遺言能力が認められず無効です。
ただし、遺言能力は遺言をする時点で備わっていればよく、その後に判断能力を欠く状態になったとしても遺言の効力には影響ありません。
遺言の取り消し
遺言者が遺言書作成後、取り巻く環境や状況・事情の変化、心境の変化等があった場合は、「いつでも」「誰の同意もなく」、以下の方法により、遺言書の内容を変更したり取消したりすることができます。
新しい遺言書を作成し、以前に作成した遺言を取り消す旨記載する。
前の遺言の内容を忠実に記載した上で『右遺言をすべて取り消す』等と記載した遺言を作成した場合です。
遺言書を破棄することにより遺言を取り消す。(自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合)
自ら遺言書を破ったり、焼却した場合です。
ただし公正証書遺言の場合には、原本が公証人役場に保管されています。手元の正本や謄本だけを破棄しても、撤回したことにはなりません。
前の遺言書の内容に矛盾する日付の新しい遺言書が存在していた。
子に不動産を与えるという遺言書を作った後に、妻に不動産を与えるという遺言書が有効に作成され存在していた場合等、前の遺言書は取消されたことになります。
遺言書作成後に遺言者が遺言の内容に反する行為をする。
子に不動産を与えると遺言書を作成した後、第三者にその不動産を売却した場合などです。
遺贈目的物を破棄する。
例えば「○○所在の建物をAに遺贈する」と遺言していても、遺言者がその建物を取り壊してしまったときは、その遺言は取り消されたことになります。 Aの承諾は必要ありません。
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